non-no 1986年7月20日号

JULIE

近ごろ男どうしの酒がうまくて一杯飲み屋の常連になっている沢田です

LP『CO-CóLO1』で本物の実力を聴かせる沢田研二

ほとんどだれも信用してくれないけど、ぼくは内気な男です

 音楽活動を続けて20年–言葉にすると簡単そうだけど“人気”という移り気でつかみどころのない現象を相手に、20年間もトップ・スターとして輝き続けることは、むずかしい。実直にサラリーマン生活を20年間続けるのとは、わけが違う。
 そんなとんでもないことを、彼はやり続けてきたわけだ。この6月25日にニューアルバム「ココロ・ファースト」を発表し、全国ツアーを直前に控えて、私たちの前に姿を現した彼は、ちょっぴり疲れた表情。
 「すみません。実は二日酔いなんです。夕方にならないと立ち直れそうもないな」
 彼は申し訳なさそうにテレ笑いする。少年みたいなギンガムチェックのシャツと白いコットンパンツ姿で、うっすらと無精ヒゲをのばした彼、。テレビで見る美しく端正な沢田研二とは思えない、普段着の顔をしている。
 「昨晩はバンドの連中と飲みまして。エッ酒の量?そんな、酒飲みは何杯飲んだかなんて数えながら飲んだりしないよ。分かんなくなっちゃうんだから。で、最近は酔うと説教をはじめるんだって。イヤですね、オジン臭くって(笑)」
 ここ1年ほど、彼はNHKの朝のドラマ『はね駒』で宣教師役を演じた役者としての活動以外、ほとんどマスコミから姿を隠していた。その間に、なんと彼はバンドを結成していたのだ。バンドといっても彼のバンドではない。彼は“ココロ”というバンドの一ボーカリストとして、今、音楽活動に打ち込んでいる。ドラム、ギター、キーボードなどには現在日本のロック界で、最高の実力派といわれる人たちをそろえて。
 「ぼくはタイガースやPYGを解散した後は、ずっとソロ歌手としてやってきたけど、いつも心の中では「バンドをやりたい、やりたい」っていう気持ちがあったんですよ。もちろん、タイガースも5人が対等にハモリあってた。でも、あのころはもう訳も分かんないうちに人気者になって、これからだなあと思ってた矢先に、解散!今度は、もっと自分たちのペースでジックリやりたいな。でもね、ぼくが何かをやろうとすると、すぐ『沢田のことだから、また派手なことをやるんだろ』とか『音楽よりも見せるほうに力入れちゃうんじゃないの?』なんて、不信感を持たされちゃってるの。だから、その誤解を解くために、この1年間くらい、バンドのメンバーと酒を飲みながら“話し合い”に努めてきたわけです(笑)」
 タイガース時代からはじまって、ソロ歌手として『勝手にしやがれ」、『灰とダイアモンド』など次々にヒットを飛ばしてきた彼は、つねに、ワルの香を漂わせる美しいヒーローとして私たちを魅了してきた。それが飾りけない大人の枠で勝負するバンドのボーカリストになる–これはやっぱり、1年間くらいは飲んで説得しないと、周囲は納得しないかも・・・・。
 「全然信用してもらえないかもしないけど、ぼくは新しいことに挑戦するのは苦手なんです。ぼく、本来の性格は内気なんですよ。昔ね、高校生時代でも、『何かやろうぜ!』なんて自分からは絶対にいいださなかった。『映画観に行こうぜ!』とか友達に誘われてはじめて、『う~ん、行こかぁ』なんてノコノコついて行くタイプ。だから、仕事のしかたもそうなの。プロデューサーとかが新しいアイデアをだすと、ぼくはそれにノッてしまうの。ただ、黙ってノルだけじゃぼくはバカみたいでしょ。じゃ、やるベェ!って感じで、そのアイディアをドーンと派手にふくらませちゃうんです。で、結果的には、ぼくは派手で、ずうずうしい人間みたいに思われてしまう。本当は、ボーッとほうけてる時間の方が多い人間なんだけどなあ」
 内気だけど、ノリやすい性格だけに、好意を持っている人間のいうことは、すぐに受け入れる。ついでに、その人の言葉づかいまで受け入れてしまい、突然、北海道なまりでしゃべる沢田研二が、1カ月くらい続いたりするとか。気むずかしい男、アンニュイ人間・・・・彼についての様々なウワサが吹き飛んでしまう別の一面を見てしまったような気がする。

『はね駒』の宣教師役、アレは本当にやりにくかったなぁ

 「この5月ごろまで、ぼくは『はね駒』で宣教師役なんていうのをやってたんだけど、いや、あれはやりにくかった。あんなに純粋で気マジメな役ははじめてだしね。おまけにあんな役をやってると、たぶんテレビを見てる人は「こんな役やってるけど、本当は沢田研二って違うんだよね』なんて、ニヤニヤしてるんだろうな、とか考えちゃって。気恥ずかしいっていうか何ていうか・・・・。
よくほかの役者さんたちは、自分と違う性格を演じると、フラストレーションの解消になる、なんていうけれど、ぼくは逆ですよ。芝居をやればやるほど、ストレスたまっちゃう」
 そのストレスをあえて求めて、彼は今年12月には、泉鏡花の原作をもとにした舞台『貧民倶楽部』に出演する。厳しい演出家として数多くのエピソードを持つ蜷川幸雄さんの演技指導に耐え、名女優浅丘ルリ子さんの相手役を務めようというのだから、これがストレスでなくて、なんなのだ!
 「いえ、もうぼくはガンガン怒られるつもりでいます。勉強だと思って。それこそわき役もうまくできなきゃプロとはいえないものね。ぼくね、いわゆる“現代のアイドル”っていわれる若い子たちの仕事も認めてますよ。あれだけ売れるのは、なまじっかのことじゃないってこと知ってるから。ぼくは自分でも昔からやってきたことだから。ただ『そのペースを5年、10年続けられるか、コノヤロ』って思うのね。輝きを続けること、ひたすら自分のペースで歩いて行くことが、実はむずかしいんだよね」
 そう言い切った彼の横顔には、気負いのない自信があふれている。時代の流れに逆らわず、かといってその波を必死で追いかけることもないナビゲーターのような目だ。
 カフェバー的なイメージを漂わせていたジュリーではなく、焼き鳥を食べながら男同士で飲んでいる沢田研二の渋い横顔が、ふと浮かんでくる。
 「そう。ぼくは今、ギャルの来ない一杯飲み屋の常連なんです。髪の毛ボサボサ伸ばして、毎日そると痛いから無精ヒゲがはえちゃってても、いいじゃないですか。ぼくの性格ってこれ、このままなんだもの」

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