ザ・スター 沢田研二9

JULIE
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第9章 JUST A MAN

話した人 井上堯之(作曲家)<1976年3月5日>

真実に近い人生

 もしもこの世に真実があるとするなら、ぼくの知る世界で一番近い生き方をしているのが沢田研二ではなかろうか。

 ひと昔前になる。ぼくも一員だったザ・スパイダースのファンクラブの集いに、まだ京都でファニーズと呼ばれていたザ・タイガースのメンバーが全員で見物に来ていた。前列から5、6番目に沢田は座っていた。
「おまえはバンドをやっているのか!?」
 ステージの上からぼくは沢田に声をかけた。光っていた。持って生まれたスター性が激しくぼくを刺激し、声をかけずにはいられなかった。沢田研二との初めての出会いであった。
 二度目はウエスタンカーニバルの華やかなザ・タイガースのデビューであった。もはやグルービーの黄色い声は彼をしっかり支持しているのがわかった。めくるめくグループサウンズブームの中で、初めて大ステージを踏む新進グループ、ザ・タイガース。
 本来ならこの若者達は顔を上気させ、足が震えるのも当然な日劇で、沢田はマイ・ペースであった。もちろんエネルギッシュであった。ところが彼のアクションひとつとっても、それは自分の音楽ののり具合でおこなっているのではなく、明らかに観客の波長に合わせたプレーであった。楽しむのは自分じゃないというショーマンの立場に立って、完成されたステージをくり広げる沢田に、頭の良さをしみじみ感じた。
 こいつは歌手ではなくても大成するだろう・・・・。

PYGを結成!

 三度目の出会いこそ、沢田とぼくを決定づけるPYGのグループ結成時であった。ザ・タイガースから沢田研二、岸部修三、ザ・テンプターズから萩原健一、大口広司、ザ・スパイダースから大野克夫、ぼく井上堯之。
 以前よりある種の敬意を持っていた沢田と一緒にグループを組めることは願ってもないことであった。さらに魅力的であったのはギタリストとしてぼくはPYGに参加するのではなく、リーダーとして取りまとめてくれないかという話であった。沢田という素材の中でぼくの音楽性をどれだけ表現できるか、それは挑戦でもあった。
 ザ・タイガースがリーダーの岸部君がいうごとく、そう音楽的であろうとは思わなかったグループであったのだったら、PYGは音楽的部分を大きくさせようと思考する新しいグループであった。やっと本音で活動が出来る、そう思った。
 実際それまでのグループサウンズに対する風当たりは強く、今では笑い話になるような髪の長さ、コスチュームデザインひとつにもマユをひそめる頃であった。風俗としての評価しか得られなかったぼくらに、日の当たる場所がやっと出来た。
 沢田はぼくが手を抜くのをまったく許さなかった。PYGは結成当時は青山スタジオで練習の毎日だったのだが、あの上目づかいの冷静なひとみがぼくを追った。
 最初のシングル盤を「花・太陽・雨」とグループ内で決定した時、沢田ひとりはあまりのり気でなかったのを覚えている。
「すこしむずかしすぎるんじゃないか」
 彼の予測は不幸にも当たってしまった。ヒットチャートには顔を出したものの、世間から期待されたスーパーセッションバンドにはほど遠いものであった。
 ぼくらはよく集まった。音楽の話であり、酒であり、ギャンブルでもあった。どんな時にも沢田はいた。麻雀をやらない彼のそばで卓を囲めば、おもしろくもないはずなのに、ウイスキーを飲みながら笑っていた。
「人の話を聞くのが好きなんだ・・・・」
「沢田は人間を信じるようになったな」
 PYGの集め役であった中井氏から、リーダーのぼくにあえてそういう声がかけられたのは間もなくであった。ぼくは天下の沢田研二といわれるような彼のスポークスマンになりたいと思った。

女性ボーカルと

 PYGの人気は予想外であった。シングル盤3枚、LP2枚を出してぼくらは落ち込んでいった。
「これ以上沢田をまきぞえには出来ない。一時離れよう」
 沢田をはずしたメンバーはぼくの提案に賛成してくれた。怒ったのは沢田だった。絶対反対だと、ナベプロで激したという。
「沢田、きみに今後の協力は惜しまないつもりでいるのだから・・・わかってくれ」
 PYGのリーダーより、沢田のバックである井上バンドのリーダーにまわったぼくと、この時点で彼に裏切り行為をしたことになった。沢田をリード出来ないとわかった時、ぼくに遠慮や、いらぬ気づかいが生まれた。ぼくと沢田はさびしくなっていた。このままでは沢田と向きあえない・・・・。
 ぼくは井上バンドに麻生レミという女性ボーカルをむかえてウォーターバンドを別に結成した。これで沢田、きみに新たな挑戦が出来る。

ボクの心情を・・・

 歌を作った。
「Just a man―ただの男」沢田に歌ったものだ。最後に現在のぼくの心情としてこの歌詞を贈る。

Just A Man
This is your way
Come this way
you're just man
Silent man silent power
Power is you
your way not easy
But your way's fortune
your way's so hard
But your way's real
Let's get together
Let's begin
Come this way Dream is you. 
(井上堯之・作詞・作曲)

ジュリーと共に仕事が出来た喜び、
いいものを創れたからといって世間の評価は同調するわけではないことだとか、
長い目で見ればいいものは時代を経ても評価されるものではあるけれど、
ビジネス的な面で見れば、その瞬間がダメならストップせざるを得ないわけであって、
数々の矛盾を抱えながら生きざるをえない。
いろんな困難があっても、それを力に変えて、
ジュリーには輝いていてほしいと。
歌詞から感じたこと。

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