ザ・スター 沢田研二27

JULIE
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第27章 あと4日

<1976年7月16日>

20日午前零時解禁

 沢田研二様
 あと4日だ。あなたは7月20日午前零時をもって謹慎処分1ヵ月を解かれる。異常に肌寒かった梅雨空も明けて、まぎれもなく熱い太陽が昇る頃だ。そしてあなたのちょっとはにかんだ素顔とまた対面出来る。
「ジュリー・ロックンツアー’76」の構成はほぼ完ぺきに出来あがった。20数曲を歌いまくるというが、新曲がなんと3分の2近くを占めると聞いて驚いている。
 それから歌ナンバーをカセットテープにつなぎ、ステージ進行の最後のチェックにスタッフは追われている。あとはアレンジャーにまわすだけだ。
 強力な新しいスタッフが加わった。演出の平井靖人さん、美術の朝倉摂さん。
 こうした今回のツアーをぼくなりに解釈すれば、「より人間的に、より自然に」といったテーマが感じられる。歌手は歌がすべて、という原点にたち帰って、あなたが一番歌いやすい状況を作ることにスタッフは賭けている。
 道具や明かりにたよることなく、沢田研二の歌一点に的はしぼられるのだから、あなたの負担が従来より増すことは必至である。 

皆一緒に踊ろう

 あなたは日本でロックのナンバーを歌うことの困難さを知っているはずなのに、あまりぼくの前で口には出さなかった。
 後打ちのリズムにのって歌うのに、観客の前打ちの手拍子に合うわけはない。あなたは観客と自分の世界とのコミュニケートを結ぶために、しばしばステージの上から呼びかけた。
「さあ立ちあがって一緒に踊ろう」
 そういえばファンは隣の人をうかがいながらも、やがてロックのサウンドに体中で酔うことを覚えた。
 いつしか沢田ファンの常連は、あなたのステージの仕草ひとつで、ぴたりと反応できるプロ化した観客までも育っていった。ロックに慣れていない日本の観客の音楽的水準を高めていくのもあなたの役目のひとつだったのかもしれない。いつか日本の音楽状況も変わるだろう。ロックがポピュラー化する日も訪れるだろう。だが、それまでの時間はあまりに長い。あなたは急いだ。
「沢田君の積極的な方法はまちがっていなかったと思う。だがファンの反応が、歌を聞いて高まった自らの反応ではなくて、知らず知らずに彼の指揮のもとに、条件反射を覚えた反応であることも確かだ」
 スタッフの一人が会議中に、反省にも似た発言をした。彼もまた観客を裏であおりたてていた責任を感じてのことだ。それを実感として持ったのは秋田のステージの時だったという。

今こそ触れ合い

 東京から追ってきた沢田ファンは会場の前列にズラリと席を取っていた。何度もあなたのステージを見て知っているファンは、見事にあなたの歌とコミュニケートした。
 フィナーレ近くなって激しいリズムを井上バンドが刻みはじめると、ファンは立ちあがった。その時ステージのそでから客席をみつめていたスタッフの彼は異常な光景に出合った。立ち上がったのは東京から追って来た顔なじみのファンばかりで、秋田で初めてあなたのステージをみた人は、どうしていいものかわからず、ただ客席でボウ然と見守るだけであったという。
 そのギャップは隠せない。秋田のステージで席についたままの観客数が物語ったように、現在の日本では、ロックにのりにくい人の方が圧倒的であり、正直なのかもしれない。
 真のコミュニケートとは一体何なのだろう。あなたは今度のステージを迎えて一層考えているにちがいない。いまこそあなたの歌の本当のふれあいが望まれる時ではないだろうか。

さあロックツアー

 20日からただちにリハーサルが開始される。この1ヵ月部屋のかたすみでしか歌うことを許されなかったあなたは、いきなり大声が出せるのだろうか。24日つま恋でスタートする合宿では、久しぶりの野外がまぶしすぎるだろう。すっかり白くなった肌が、もとの色にもどるまでには時間が短すぎるかもしれない。
 早くあなたの歌が聞きたい。

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