番組名は不明ですが、音楽評論家・渋谷陽一氏の番組に沢田さんが出演された時の書き起こしです。
渋谷:久かたぶりに私のアイドル、沢田研二さんに来ていただきまして今日はじっくりお話を伺おうと思うんですけど、最近はすっかりいろんな取材とかなんとか見てもロックバンドのボーカリストというコンセプトを強力に打ち出してますけどもね。これはやっぱり事務所の独立等々いろいろなものとワアーッと固まって我々の方には伝わってきてますけども、このメンツを見て沢田さんが「バンド、バンド」という発言を積極的にしているのを見て、なんとなく僕はいきなりなんか脈絡もなくこれは「PYGの復讐戦」ではないだろうかっていう。
沢田:(笑)
渋谷:いやぁあの60年代ていうか、日本のロックの初期のツワモノがいっぱい集まっているんですけども。やっぱり沢田さんにとってもロックというこだわりが「あ、ここにあるんだなこの人には」というそういう感じがして、いきなりクリームでしょ。
沢田:(笑)
渋谷:ああ、そうなんだぁ、そうだと思ってたけどやっぱりそうなんだあという、やっぱり70年代でもなんでもなくて、やっぱりあそこなんだという
沢田:そうですねえ
渋谷:沢田研二のロックはここだぜという
沢田:うん
渋谷:やっぱりあそこに
沢田:ありますね。
渋谷:こだわりのなんか一番の焦点があるみたいですね沢田さんの
沢田:うん
渋谷:その時期に、沢田さんきっとあれやりたかっただろうけどやれなかったみたいなのがあって、それの復讐戦というようなね
沢田:うんうんうん
渋谷:そういう気がすごくするんですよね
沢田:そうですね。。まあPYGでけっこうそういうのは解消されたけど、でも人気者とミュージシャンていうそういう隔たりがあったみたいだし、結果的にはバラバラになっちゃったから、今度はみんなも一山越えた男だというようなね。一からはじめるんだろうというように思ってくれたんだろうし、今まで背負ってきたものは捨てることはないし、正確にはみんな音楽的趣味は少しずつ違うけども、みんながギターを弾いたり太鼓をたたいたりベースを弾いたりしている前で沢田が歌うということで音楽を創っていけばきっとなんか面白いものでひょっとして新しいものが創れるかもしれないなって。ほとんど酒飲みながらミーティングしてますけども(笑)
渋谷:ステージ出て来た時にいきなりハマってましたけどね。ハマってるのが怖かったですけどね。あの汚いおじさんが沢田研二にハマってるというのがね。ども逆に言えばあのクリームをやり、「スタンド・バイ・ミー」をやっている沢田研二を僕は客席で見てわあっという感じがしたんだけども、PYGの時には残念ながら石を投げられた。で、復讐戦をやっているクリームかなんからの沢田研二が華やかなステージで歌ってるけれども、女性のファンたちのリアクションは決してその曲に関してはいいものではなかっという
沢田:そうですね
渋谷:ああ、いつも沢田研二はつらいところを歩んでるというまた思い入れがね
沢田:(笑)
渋谷:彼はどのような心境でこのクリームを歌っているのだろうか「スタンド・バイ・ミー」を歌っているのだろうか。と評論家づいちゃいますけど。やっている方は楽しんでやっているんでしょうね。
沢田:そうですね
渋谷:それとも何がしかの考えがありますか?
沢田:やっぱりあの頃のやつはいいなあと思いながらね、やってて
渋谷:できればそこでワアーッときたほうがいいんじゃないですか?
沢田:でも渋谷さんが言ったように、男の人が少ないかもしれないけど「おお、これをやってるなあ」って思ってくれることをひそかに楽しみにしているので大丈夫ですよ(笑)
渋谷:今度のアルバムなんですけども、今までの沢田研二さん自身のオリジナルから一個抜けて、「あ、ひとつ自分のやり方見つけたな」というようなね。それはやっぱりバンドのせいもあるのかもしれないですけども作者として一皮むけたという感じが聴く側からはするんですけどもね。
沢田:ああそうですか。作ってるほうとしては今回のはちょっと前に作ってた曲なんですよね。いつもなら全部パスパスって言われる曲で3回ぐらいクビになってる曲なんですよね(笑)僕の場合ちゃんと実際に歌ってみないとね、ヘタなギターでボソボソって言ってるとあんまりいいって言ってくれないんですよね。今回はまったくきらびやかさとかそういうようなものはなくていいと思ってたし、みんながやりたいようにやることをいっぺん出してみようていうんでやってみましたから、洋楽っぽい雰囲気があると言ってくれる見方もあればなんだか眠くなるっていうのもあるんですよね。そのへんでまた僕らがブラブラブラブラしているとああそうかああそうかといつも思っていてはいけないし、実際に音を出すのは人間が出してるから、一度や二度会って話したぐらいではなかなかそれは分からんと思ってるんで(笑)じっくり構えてやるつもりではいるんですけど。
渋谷:今度浅川マキさんが詩を提供されたりして全体を聴いて思ったんですけど、再度「沢田さんて暗い人なんだな」
沢田:(笑)
渋谷:つくづく思いました。
沢田:明るくはないですけどね。声自体はそんなに暗くないとは思ってるんです。
渋谷:こういうこというのはアレですけどステージ見て今更「いや、歌うまいなあ」って思いましたね。驚いちゃった本当に。
沢田:危険な状態ですねそれは(笑)
渋谷:今回のレコードのアレンジも歌がある程度歌えなかったら、音楽的にもかなり過激なアレンジをしていますね。
沢田:そうですね(笑)
渋谷:これは沢田研二は歌に圧倒的な自信を持っていると。思っているでしょ沢田さん
沢田:これだけのバックがいるとね、それこそ特攻隊でどんどこどんどこ行けちゃうっていうのはありますよね。「俺にはこんだけバックがついてんのや」みたいな(笑)「そんな俺とケンカするのか」みたいな(笑)そんな関西のノリが(笑)
渋谷:詞なんか聴いていて浅川さんの詞をすごく歌い込んでいるのを聴いてやっぱり沢田さんは自分一人で部屋へこもって考えはじめるととことんいっちゃう人だなっていう気がしますね。
沢田:いや、本当はそうじゃないですね。そういうのは手短にすまそうっていう。「結局自分に帰ってくるからいいんだ」っていう
渋谷:わりと吹っ切っちゃうほうですか?
沢田:うん。髪でも洗って「もういい、もうこのことは考えない」
渋谷:髪を洗っちゃうと吹っ切れちゃうんですか?
沢田:大体そういう性質です(笑)
渋谷:簡単でいいですね。
沢田:拭いさりはしませんけど、どっかで残ってはいるけど(笑)
渋谷:だけどそういう乗り越え方みたいなものもだんだん学習してきて。ファッションも最近大胆ではないですか?「オレは無精ひげすごくカッコイイよ」と「オレ汚い恰好キまるよ」という
沢田:いえいえそういうのはないですよ。まだどっちかっていうと派手なものを着ても大丈夫だっていうほうの意識のほうが面白さを感じてるし、無精ひげとかそういうのは自信があって出しているわけじゃなくて、「あっ、しまった」って
渋谷:そうは思えないなあ
沢田:ホントホント。そういうのどっちかって嫌いだから僕
渋谷:あっそうなんですか?
沢田:うん。「汚い」と思われる分にはいいんだけど、「男っぽくして」とか思わるのは嫌だと思って。ただ髭剃るのが面倒くさいだけかもしれない
渋谷:ほっとくと限りなく汚くなっていっちゃうほうですか?
沢田:うんそうですよ。
渋谷:構わない?
沢田:構わないほうですよね。
渋谷:沢田さん自身が今戦っているフィールドというか今やっているあんまり表現がよくないかもしれませんがマーケットというのはありますか?それはどこという感じがしますかね。今や沢田研二的なマーケットという感じになってしまって、歌謡曲でもない、いわゆる日本のロックというフィールドでもない。あるいは歌謡ポップスというフィールドでもない。ある意味すごく難しいところでやっているという感じがするんですけど
沢田:いろんなところにまたがってもいるしみたいな
渋谷:商売という局面から見ると不安感とかありませんか?
沢田:それはもちろんあるし、だけどそんなこと言ってられなしし、ここが一番いいんだろうなっていうところだけばっかり攻めていてもね。例えばじゃあ僕のファンの人達っていうとニューファミリーというかそういう人たちだけかというと決してそうとも思わないところがあるしね。そんなのデータとかそういうものではじき出された統計とかっていうのはあくまでも結果だし、これから先はどうなっていくのかということは本当に分からないから、それこそ本当にスケベにあっちもこっちもってちゃんとツバをつけて粉まいてやっとかないと、そんな納まりがっている時だとまだまだ全然ないしね。こっちもいいなああっちもいいなあってどこの水が美味しいんだろうって寿命の短いホタルみたいにこっちあっちってやってるのがいいんじゃないかって思うんですけど
渋谷:前来ていただいた時にも言いましたけども、やっぱり一番損な札を引かざるを得ないところに沢田研二は常に最初に走っていってるんですよね。例えば佐野元春とか井上陽水を使って売れ線のメロディーを・・というのは今や主流ですよね。これはかなり前に沢田研二がやっていたことだし、あるいは非常にロック的なメロディーを云々ていうのはかなり前にやっていたことだし、そういうのが主流になっていた時には沢田研二は別の事をやらざるを得ないところになぜか行ってしまっているという「オレならこれ昔やっていたんだぜ」なんて言っちゃいそうですが沢田さんあまり言わないですよね。そういうこと言うのもことさら避けているみたいな。
沢田:(笑)(そういうこと言うの)好きじゃないけどね
渋谷:沢田さんのやっぱダンディズムなんですか?
沢田:こだわってというか、そういうことにはこだわってますよね。わりと。やっぱりなんだかんだって言いながら今が一番は重要だっていうか、これから先も含めてね。今の時点でどうなんだっていうことでやっぱり評価されるだろうし、それでいいと思うんですね。流されて行く先っていうのはそんなに変な部分じゃないんだろうなと思う部分もあるし、だからちょっと頑張ってこうああだこうだと試してみたいなとも思ってるし
渋谷:またなんかアブナイ冒険をやりそうですか?
沢田:またそんなに大したことはできないとは思うんだけど、気さくに貪欲にっていうか、そんな感じで。で、それこそ売れるとかっていうような結果がひとつでると調子にすぐ乗る性質だと思うんでね(笑)それ行け!って感じで。それまでこう自分でちゃんとしっかり地に足つけて待ってられれば大丈夫だと思うし、自分でそれをつかみに行ければもっといいかもしれないし、なんて思っています。
渋谷:本当にあれですね。抜けちゃったというか、一山越したという感じがしますね。
沢田:本当はそれどころじゃないんですけどね(笑)これでしばらく行かないと。目をキョロキョロキョロキョロしているとよくないから(笑)
渋谷:まったく余計なことですけど僕芸能週刊誌的なことにはほとんど疎くて、見出ししか見たことないんですけども、スキャンダルに対するスタンスもなんか非常に最近は余裕を持っている感じですね。
沢田:(笑)本当に見なきゃ見ないでね、全然知らないで済めるわけじゃないですか。別に知っている人はこうやっていればいいしって、そういう具合に自分が楽になれるような物の考え方にはできるようになってきたけど。前だったら「なんでこんなこと書くんだ」「バカヤロウ、嘘書きやがって」ってすぐ思ってたけど、それもこれもなんだかんだって俺のことだけ考えたって嘘もあったし本当もあったしよくも書いてくれたし悪くも書いてくれたしみたいなね。それと僕のやることとは関係ないわ人がやってるんだわ。というふうに思えたり、「人はまあなあ・・・つまらないよりも面白いほうが面白いわなあ」と思えるようになってきたよね。
渋谷:昔コワかったですけどね、ああいう事に対する沢田さんてのはね。結構とがってましたけどね
沢田:それがもう似合わなくなってきてるっていうかね、もう「いい歳して」って言われちゃうようになってきたから、「おうもっとガンガン行け、言うべきだよ」と正しいと言ってくれる人がなかなかいなくなったっていう。それも自分のせいだしね。
渋谷:だけど本当にマイペースというか、今度レコード聴いてそういう感じがすごくしますね。セールス的にはひょっとするとなかなか難しいヘビーな気がしますけども。ファンはいいのさ、という感じがね。我々の思い入れのストーリーを作っていただいて。沢田研二の。希望の星ですから30男の。頑張っていただきたいと思います。本当に今日はどうもありがとうございました。
沢田:ありがとうございました。
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