JUNON(86年3月2日号)②

JULIE

嫌われないようにすると、自分がダメになる。

沢田 長く続けることが大事っていう反面、芸能界のしくみとか、人間関係みたいなので、だんだん身動きがとれなくなってくるでしょ。すると、”ああ嫌われないようにしよう”っていうのが、賢い方法だと思うわけ、でもそうすると、自分がどんどん萎えていくんだよね。業界の常識っていうと、3つ我慢して、3つ我を入れて、その間の感情を3つ入れて、なんてやってると、まるくなるかもしれないけど、自分がちっちゃくなっちゃうから。

宇崎 そういうの、すごくよくわかるなあ。長くやってると、遠慮しちゃうんですよね。カッときたときに、”テメエ”っていいたい気持ちを、それをやったらこのスタッフが困るだろうなぁとか、いろいろ思うと、やめとこってなっちゃうんですよね。
 それがデビューしたばっかりのころだったら、何のルートもなかったから、何でもいえたんだけど、今15年目なんですよ。デビューして。すると、いろんなしがらみが出てきてんですよね。だけでもう遠慮はやめて、いいたいことはいおうって気になってんなぁ。俺。

沢田 1年間、休もうとして休んだんじゃなかったんだけど、まぁ、もうこれ以上小さくなれないって思ったのがその理由で、またゴツゴツとんがっていくぞ、みたいなスタートが去年の夏だったのかなぁ。
 だって、業界とか見ると、やっぱり変わった人ばっかり残ってるもん。よくも悪くも、変わってるっていうのが、僕らの特権じゃない?

宇崎 そうっすよねえ。

沢田 決してちっちゃくまるくならないで、常にボルテージが上がってるのは、内田裕也さんね。あの人は、金もないのに映画作っちゃうじゃない。自分の足で東宝の社長に会いに行ったりして、とにかく形にして、人から評価される位置にまでひきずっちゃうあたりが、すごいと思うのね。僕は、はっきりいって、あの人は人から嫌われてるとは思うけど(笑)。でも、僕は好きだよ。

宇崎 僕もすごい人だと思う。

沢田 先輩っていっても、僕らより上の年代でマネしようと思う人、いないんだよね。最初はビートルズやプレスリーのマネで始めたにしても、ミック・ジャガーにしたって、せいぜい25、26歳までしかやってなかったわっていう。それが僕らは、もちろん宇崎さんも同じだと思うけど、30までやって、もう40の声を聞こうとしてんでしょ。

宇崎 自分と照らし合わせる鏡みたいな人がいたらいいんだけど、いないからけっきょく自分たちが、新しい道を作ろうとしてんじゃないでしょうか。裕也さんは、カマ持ってね、荒野をひとりで耕してったと思うんです。それをしっかり踏み固めていくのが、僕らの世代のミュージシャンていうのかな、いずれアスファルト道路のハイウェイにして、一車線二車線作って、渋滞しないですむようなね、そうなってったらいいと思うんですよね。

賞レースに出ることより、もっと大事な・・・。

沢田 これまでも、レコードの売り上げのドッスン、バッタンは、つきまとってたでしょ。ずっと下がってきたら、スタッフが”このままではちょっと・・・。もう少し歌謡曲よりの歌にしましょうか””へえー、そんなにやばいのかな”なんて本人は思ったりするんですよね。

宇崎 はからずも演歌にいっちゃったとかね。いわゆるロックじゃないってことで、長続きさせている人もいるわけですよ。演歌の人がさ、前向きじゃないとはいわないけど、2、3曲のヒットでもって、けっこうガバッと稼げるとかね。僕、びっくりしちゃうんだよね。僕らロックがね”渚のヨーコ・・・”なんてもってたって、生き残っていけないでしょう。シッシッって相手にされないんだから。

沢田 たとえばの話がね、歌謡大賞とか何とか音楽祭って、2、3年前までは、全部に参加してきたんだよね。ところがスパッと切れるとね、”あ、そう”ってもんで、”なあんも関係ありません”て感じになるんだよね。

宇崎 僕は沢田さんみたいなし烈な賞レースには参加してないけど、似たようなところで”嫉妬”って、あったんですよ。
 オリジナル・コンフィデンスなんて、あんなもん今はじゃまくせえんだけど、毎週くると見ちゃったんですよ。てめえのは100位にも入ってこねえのに、若いコたちがゴソーッと上位に載ったりすると、”ンのやろう”とか、この僕でも思ったりしたんですよ。

沢田 ベストテン番組もそうだし、賞レースもそうだけど、あれはお呼びがかかって初めて出られるんでしょ。それよりも、もっと大事にすることって、あるじゃないですか。もっとハートフルなことって、だけど、もうやめたとか卒業したとかいうんじゃないし、紅白歌合戦にしても、落とされたら”バカヤロー”っていうかもしれないけどね(笑)。

いい状態だったころと今とを比べちゃダメだ。

沢田 要は、自分を信じるってことだと思うんだ。最初から結果をわかってやることほど、つまんないことはないけど、自分が思う前に、いい結果が出たっていう時期が、過去にわりとあったから、そのころと今と、自分で比べることにおちいらないようにしないと。1年で何もかもやるんじゃなく、もっと時間をかけてやろうと。この俺が決めて、その間のいろんな摩擦に対して、自分で大丈夫、大丈夫って、自分を信じていかなきゃいけないと。それを痛切に感じているんだ。

宇崎 今は世の中がみんなせっかちになって、何でも型にはめて、物事を判断しちゃうでしょ。テレビに出なくなると、売れなくなったとか、働いてないみたいなね。
 僕、このあいだレコード出したんですけど、出さなくてもよかったって思ってんです。心のどっかで、あれは僕にとって記録であってセールスじゃないと思うようになったから。何らかの事情とか環境のために、コンサートに来れない人が、レコードでも聴いてくれりゃいいって、そんなふうに思ってんだ。

沢田 僕は、ファンの人たちにだって、こうい俺がイヤだったら、どうぞほかの人のところへ行ってくれていいと思ってるよ。俺自身が歌手になりたくてなって、ファンはそれによってたかってきたわけよ。過激な発言でしょ。でも理屈としてはそうなわけ。たかってくれたおかげで、いろんなバクテリアを、僕につけてくれて、そっから発芽して今みたいになったんだけど、もとをただせば、ファンと歌手って、そういう関係でしょ。
 でも理屈としてはそうだとしても、僕とのつながりでは、そんな理屈を超えたものが、いっぱいあるはずやん。とりあえず僕が大将であり先峰であって、その中でみんなが、あたふたしたりあわれたり、落ち着いたり納得してくれればって、そう信じている。

人生、楽して得をするなんて、ありえない。

宇崎 そのォ、売れなくなったら、歌謡曲とか演歌よりになるというような楽な方法とか、長続きするためのレールって、あったと思うんですよ。今まで。でも僕もそうだし、沢田さんもたぶん同じだと思うけど、そういうのイヤなんだよね。生まれて死ぬまでの間、何したいかって、ともかく長続きしましたとか、家建てました、大きいのとかって、んなもんおもしろくもなんともないじゃない。もっとスピリチュアルな感覚とか喜びを、持ちたいんですよね。だから、あえてめんどうくだい方向に行くっていうか。

沢田 うん、絶対に楽して得をするっていうのは、ありえないと思うし、僕なんかも宇崎さんを客観的に見てると、作家としてはすごい人だと思うわけ。業界的な見方をすると、大作家になれば、なんも困らないし、喝さいを一身に浴びてられる人だと思うんだ。でも行動の部分としては、正反対でやって、そのパワーを自分のために生かしてるのって、いちばんステキなことだと思うんだよね。

宇崎 ありがとうございます。僕もたまたま音楽活動を1年間休んだあと、沢田さんと話したら、マインドが似てるところがいっぱいあって、ほんとにイエーッて感じなんですよ。
 沢田さんは、ロックと、ポップとかヒットソングという分野との橋渡しをしてくれて、その真ん中に足をかけて、がんばってる人だと思うから、そのがんばり方が、沢田さんが素足でビューッと走っているとしたら、僕は音楽界では後輩だけど年はいってるから、とりあえず自転車にでも乗って、がんばろうという違いはあるかもしれないけど(笑)。

沢田 ハハハハ。やっぱり、僕にとっても、同じような考えで行動している人がいるっていうのは、安心するし、お守りですよ(笑)。

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